2009年5月26日火曜日

tete-a-tete Side[M] 02

涙の味は知らないのに、血の味なら知っていた。

彼女が涙を流す時は私も同じように泣きたかった。けれど、その時はいつも私からは血が流れた。

きらきらと光っていて、氷のように冷たそうで、でも暖かくて、とても美しかった彼女の涙。
粘ついて、生暖かくて、錆びた鉄の味がする穢い私の赤い涙。


私には流せない涙を見て、私は目の前にいる"私"が私でないことを知った。

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tete-a-tete Side[M] 02

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せっかくの満月も、こうも地上が輝いていたら夜の太陽である意味がない。
美咲としては、毒々しさのある蛍光やネオンよりも冷たく蒼白い月光の方が好ましかったが、ここはこういうところなのだと割り切る他なかった。
美咲は茶色のロングコートをたなびかせながら人気のない路地裏に足を運んだ。五月蠅かった町の喧騒が、路地一つ曲がっただけで静寂に包まれる。まるで世界が移り変わったようだと、毎回こういった場所に入るときに思う。
二つの世界をどちらかに定着しきれなくて漂う私は、一体どちらの住人なのだろう。考えてみても、答えは見つからない。
こういった答えの見つからない問いはできるだけ考えないようにしている。それでもこんなことを考えているときは大抵虫の居所が悪いので、そういう機嫌が悪いときは"仕事"をして何も考えないぐらいに動くのが一番だった。その場誤魔化しだと分かっている。それでも何もしないよりはマシだ。
それにそういった八つ当たり以外の意味でも美咲にとって"仕事"は必要な物だった。
ある程度路地の奥に入ると、いつの間にか、十四、五人のいかにも荒ごと専門のような輩に囲まれていた。見る限り、あからさまにその場で雇われたような男たちが4割ほど占めている。
「今回は人手が足りなかったのか?素人に任せても無駄なことぐらい判るだろうに…」
ああ面倒くさい。口の中で愚痴るが、それとは対照的に美咲の口元は笑みで歪んでいた。此処が美咲のいた世界。夜と月、血と破壊が満ちた世界だ。
「来い、私も雪那もあそこには戻るつもりはない…!」
美咲の一言が合図となって、周りが一斉に動き出した。
はじめに寄ってきたのは雇われたような男たちだった。美咲が女で、しかも手ぶらなのを見て、完全になめているのが彼らのにやついた顔からよくわかる。

そのなかでも大柄な男が、体躯に見合った大振りで殴りかかってきた。
豪快な風切り音と共に聞こえるはずの肉の潰れる音とその感触だけを期待していた男は、そのため自分が空振ったうえ、相手に一瞬で懐に潜り込まれたことが理解できなかった。
腰を落としての重い一撃、美咲の拳は適格に相手のみぞおちを抉る。
思わない攻撃に息を溜めていた男の口から飛び出た唾液が降りかかる前に、美咲は僅かな動作で回り込み、その勢いのまま相手の頭を殺ぐように蹴り飛ばした。
「汚いもん、出すなよな」
うぇ、と舌を出して非難したときには既に男の意識は無くなっていた。
ほんの一瞬、しかし長く感じる間が流れる。何回か美咲も見掛けている者たちはいつも通り無表情だが、素人の方は力を見誤った分だけ戸惑いを隠せないようだった。
その間に美咲は両手の袖元に隠していた鎖を取り出して地面へ垂らす。ジャラン、その鈍い金属の擦れる音がまるで自分の心を表しているようだと美咲は思った。鈍くて、燻って、澄み渡ることがない闘争心。鉄の匂いがひどい、血で染まった自分の心。
今度は何人かが固まって美咲へ向かってきた。そのうち何人かは警戒してか、先程は持っていなかった武装をしている。
自然体で立った美咲に、男の一人がナイフを突きだした。胸に刃が届く前に、美咲は今まで下ろしていた右腕を上げた。その流れで垂らしていた鎖も持ち上がり、ジャランと鳴きながら吸い付くように相手のナイフの持ち手に絡んだ。
相手の驚いた表情も見ないまま、美咲は力の流れに背かないよう動きを止めずに右手を振るようにして引き、相手の姿勢を崩す。そして自ら頭をさらす格好でよろけた相手に応えるように、回転して上乗せした力で後頭部を踵で蹴りつけた。重しをつけた厚底のブーツを履いているため、鈍い音がよく聞こえ、すぐ後に吹っ飛んだ相手がゴミ溜めに突込む音がした。
自分の得物を取り出した時点で、もう美咲は相手方を待つという選択肢を捨てていた。気絶した男から鎖を振り解くと、すぐさま新しい相手に向かって投げる。鉄パイプを持っていた相手は思わずそれを鉄パイプで防いだが、美咲はそれに鎖を絡ませ奪った。そして鎖を大きく振り回し、奪った鉄パイプで相手の頭を殴打する。力が足りないと感じた瞬間にはパイプから鎖を解き、端の輪が地面に着く前にもう一度振りかぶり相手の顔にぶつけ、もう片方の手に持った鎖を絡ませ、思い切り側の壁へ彼の頭を衝突させた。
素手の相手には腕に鎖を絡ませ引き寄せると、相手の絡ませた腕と肩を掴み、腕の関節を踏んであらぬ方向へと折り曲げた。
悲鳴が途切れないなか、鎖と踊るように男達の周りを行き来する。事実、動き出してから美咲は一度も止まっていなかった。
自分の中のエネルギーを動くことにより運動エネルギーに変換すればするほど、遠心力もあいまって鎖の速度と攻撃力は増え続ける。それを止める方が寧ろ無理だ。
自分の動きが全て敵を倒す力に換算されるのは分かりやすかった。何よりこの高揚感に包まれた今、この破壊の世界の常識が染み付いた身体が勝手に動いてくれるので、美咲は何も考えずにすんだ。
思考放棄、それがすぐに思考の海に沈んでしまう自分への一時的な救済方法だった。
(私とは逆に、雪那は迷わない…考えることはしても、それの迷路に陥ることがない)
美咲に最も近い存在である彼女は昔から、まるで自分とは正反対の存在でもあった。
例えば美咲が血の味を知った頃、雪那は涙の味を知っていた。美咲が自分の世界を知った頃、雪那は他の世界を知っていた。

五、六時間前に会ったばかりなのに、また雪那に会いたい。そう今の状況とは随分かけ離れたものを考えていることに気がついて、初めてもう周りには美咲以外、まともに動ける者がいないことを知った。
気がついた途端、今まで自分を動かしていた何かが後悔などの気持ちの吹き溜まりを置いて去ってゆくのが感じて、思わず深い溜め息をついた。
虫のようにうごめく男達を避けながら、美咲はリーダー格であろう男の元に近寄った。
「これで判ったな?また少なくとも二ヵ月は私たちの周りに現れるな。伝えろ、私も雪那も香坂、神宮寺に帰るつもりはないと」
呻いていた男に言い終えると、軽い衝撃を与えて気絶させた。
一息をついて空を見上げる。完全な夜ではないのは、排気ガスと街の光が多過ぎるためだろう。濁っているのは自分で充分だというのに、この新しい世界の中は不確かすぎて、美咲は自分がしっかりと地面に立っているのかどうかさえも確信を持てなかった。
(帰ろう…)
帰る場所は一つしかない。帰る場所だけが美咲にとって確かなモノ。
帰ろう、もう一人の"私"であり私ではない"私"のもとへ。
(そうしたら、寝よう…)
この世界は解らないことが多過ぎる。今は少しでも自分が解る場所で休みたかった。
月明りの代わりに輝く街の光に誘われるように、美咲は雪那のもとへ帰るため、喧騒のなかへと紛れていった。

※※※

……
………
…………うんorz

ぶっちゃけ戦闘シーンを書きたかったのが書き始めた理由の一つ。
戦闘シーンの練習、結果は惨敗だけどね!!難しいよorz

雪那視点も(本来あったら困る)暇があったら書いて補完したいけど。

( ゜∀゜)〇彡゜( ゜∀゜)〇彡゜依存!依存!!

ただ二人に解決法がないんですよねorz
私は彼女が必要で、自惚れじゃなくて彼女も私を必要としているから二人でいいじゃんオールオッケみたいな
紗枝さんとミカドんに近いかな…
相手の幸せ第一だけど、相手の幸せ=自分の幸せだって二人とも理解しているから互いに過剰な自己犠牲はしない。
救われないな…

どうでもいいけど、合唱祭の歌が頭から離れないと思ったら中川翔子の「涙の種、笑顔の花」とか「午前六時」とかが流れてエンドレス

ティアーズトゥティアラとうたわれてキャラ被りが…
ハクオロ←→アロウン
エルルゥ←→リアンノン
オボロ←→アルサル
トウカ←→オクタヴィア
カルラさんとアルルゥ混ぜた感じが鉱山妖精?の子だし。
オクタヴィアに至ってはトウカの生霊でも憑いてんじゃないのかと思う。橋から落ちそうになるし、最初は敵だし、なんか強いんだけど努力とかが報われなさそうだし
トウカみたいに壊れるシーンもあるのだろうか…クケー!!!

あと日本史の答案に無意識で非常にイタイ間違いをしたことを返されてから気がついた。

Q.奇兵隊を立ち上げた人物は?(真A.高杉晋作)

神無A.「ひさぎしゅうへい」

………………イタイ!!!!!

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