2007年11月26日月曜日

十六夜御伽話 弐

「さて、奏ちゃんの美味しいお茶も飲めたことだし、そろそろ真面目に仕事やらなきゃいけない頃合になったねってうわぁ…いつの間にかお茶菓子全部食べられてる…」
「ご馳走様でした奏」
「俺もご馳走様」
「あ、こいつら本気で配慮ってものを知らない」
「今度また買ってきますから…すみません嗚呼さん。でもそれより今はこれからの予定をそろそろ明確にしないと依頼破棄されてしまいますよ」
俺は上条奏の言葉を聞き、お茶を飲みほすと社長いじめから頭を切り換えた。彼女の発言はいつもこの会社の良識と言い換えても間違いない。
そう、確かに協力者はいても社員が四人しかいないことはどうしても捜査に影響があった。しかも入ってくる情報は既に警察の網にかかっているものや、どう考えたって不要なものなどが多数あり、まぁそれは主に社長に対する恨みからの嫌がらせなんだが、そのふるいわけだけでも時間がかかってしまう。
「ま、その通りだね。ぶっちゃけこんなん自分たちじゃ捕まえられないだろなんて皆思ってるでしょ」
一斉に頷く社長を除く社員三名。
「こういう時は気を利かせて"そんなことないですよ!!"とか言ってもいいと思うんだ。…まぁいいや、それに関しては大丈夫、反則技使ってすぐに犯人は分かったから」
それは物語としてどうかと思う。しかしそれをやってしまうのが織谷嗚呼という人物である。彼女より強く、無茶を通せる人は俺は一人しか知らない。まぁその人はもう人の次元を軽くすっ飛ばしてるので社長が人の中では最強だと思う。
さて、俺には視ることはできないのだが、社長の友人曰く森羅万象全てのモノは川の流れのようなものに沿っているらしい。風の流れ、運の流れ、危険、金、死、愛、時、感情など細胞、原子の一つにも流れがないものはない。
当然、個人の過去の流れも視えるのだろう。多分社長がその友人にでも頼んで犯人の行動をトレースしたのだ。確かに反則技としか言い様がない。
「では嗚呼、私達は何もしなくて良いのですか?さっさと貴方か棺凪君で捕まえてしまえば終わりですし」
上条奏にお茶のおかわりを頼みながら幸帆さんが質問した。
幸帆さんも女性としては充分強い部類に入るのだが、基本的に俺と社長が荒ごと専門で、上条奏と幸帆さんがバックアップだ。…そしてめんどくさがりやな社長はほとんどの仕事を俺に押しつけている。
「ん〜、そうしたいのもやまやまなんだけど犯人見つけた方法が方法だからね。もう一回さ、犯行おこした時の現行犯じゃないと駄目なんだよね」
「え…ということはもう一人犠牲者を出さないといけないのですか…?」
上条奏が不安げな声をだす。彼女は犯罪、特に暴行、殺人などに対して強い恐怖感を抱いている。それは仕方がない、彼女自身が被害者となった時期があったのだから。
以前、上条奏は神童と呼ばれるほどの天才だった。テレビでも騒がれていた彼女がこの寂れた廃色ビル訪れた時はさすがの社長も軽く驚いていた。
依頼内容は彼女の護衛、しかしそれを俺たちは達成することができず、彼女に最後の最後で能力をほぼ半減させてしまうほどの大怪我を追わせてしまった。今でもそれは悔やんでも悔やみきれないことだが、奏はそれを許すどころかこの会社入りたいと志願してきた。
幸か不幸か元々尋常ではない身体能力を持っていたため、狙われたものの、そのおかげで事故に遭った今でも彼女は一般人より少し劣る程度の動きができる。…まぁそれでも彼女からしてみればとても動きづらく、辛いものだろうに…。
俺たちが上条奏の何を変えたのかは分からないが、彼女はリハビリをかね毎日出勤している。
「大丈夫だよ奏ちゃん。相手が分かっているというのにわざわざ殺させやしない、殺人未遂の現行犯逮捕が目標だから」
社長の優しい声を聞いた奏は安堵した表情になり息をついた。確かに被害者を出さないにこしたことはない。
「確保は棺凪くん、それまでの尾行は私か二、三人貸しのある人を引張ってくるわ。幸帆と奏ちゃんは警察とか使って絶対的な証拠を見つけ出して。そうすれば面倒くさいの飛ばしてすぐに捕まえられるし」
「「「了解しました」」」
最後が微妙にやる気のない社長の指示とそれに応える社員の声が織谷よろず請負屋が動き出したことをしらせた。

※※※

愛しく、ソレを撫でる。優しく、ソレを取り出す。
途端にソレたちは私に語りかけてくる。

ありがとうボクラヲ自由にシテクレテ!ありがとうボクラカラ嘘の毛皮を剥いでクレテ!お礼に教えてアゲル!聞いてクレル?物語を聞かせテアゲル!急いでイオウカゆっくり話そウカどうしようカ?

私は焦らない。宝物がはしゃぎながら自らの物語を紡いでいるのをじっと聞く。温かなソレは冷たくなり、冷たい私は温かくなる。幸せと温かな奔流に満たされた私は時間を忘れて物語の調べに聞き酔いしれた。
空から煌煌と満月が私たちを照らしている。まだ夜は長い。

→参に続くかも…?

生ミッキーぃいぃい…

ども、ヤバいヤバいな神無です。

何がヤバいってそりゃあテストや美術の宿題、そして

生ミッキーを掴んでしまったこと

ですよ旦那。
ぎゃあぁあぁあ!!!きしょい、きもい、不快!!ミ●キーに夢がねぇ!!
なんで掴んじゃったかというと
・お風呂上がりでいい気分だねぇ、と両親や猫のいる部屋へ
・「お風呂出たよー」「おぉ、そっか分かった」
・ついでにその部屋にあった甘栗食べつつちょっとボヘボへ
・視界からは見えない場所でやけにはしゃいでいるらしい子猫のぐーちゃん。最初はなんか消しゴムかなんかで遊んでるのかなと放置
・いつまでたってもバタバタしてるぐーちゃんをみてこいと親の微かなプレッシャー
・仕方ない、よっこらせと猫が遊んでる餌場の方へ
・暗くてよく見えないがなんかヒモみたいに細長いものが
・なんだ毛糸みたいなんで遊んでるのか、けど餌入れ倒されると困るから場所移動させるかと、ひょいとソレを持ち上げる。
・毛糸でない、生々しい感触
・毛糸でない、妙な肌触り
・毛糸にはつかない、付属品
・付属品=毛むくじゃら、足、鼻、目
・……
・………
・…………ぎ
・……………ぎゃあぁあぁあぁあぁ!!!!!
・ね、ね、鼠!!?ネズミねずみマウスミッ●ー!!??
・ぎぃやぁあと叫びながら洗面台へ、しばらく洗い続けました…
私が放置した●ッキーはその後父が処理してくれました、ありがとうございます父。つい先ほどの出来事ですた…


というか広がるグレンラガンの輪です!!サモンナイトも狙ってますが!!今日は友人から詰め合わせCDを借りてリピートしまくってます。知ってるのはヒカ碁OP・レンタルマギカOO・シモン+カミナキャラソン・クラナドED(だんご大家族)ですた。他にも聞いたことがあるのはあったものの、作品名まではさすがに難しい。


さて、寝たい…

2007年11月20日火曜日

十六夜御伽話 壱

一つ一つ、丁寧に。ふわりふわり、慎重に。壊してはいけない玩具のように私は儚い存在を壮大な物語へと変貌させる。
いや、元々これらは物語なのだ。なのに読ませたくないと勿体ぶって違う毛皮を着込んでいる。皆それぞれ違う物語なのに、同じような毛皮ばかり着て自分を殺してしまっている。
だから私はその毛皮を丁寧に剥いで隠れている中のモノを慎重に取り出すのだ。溢れ出す宝のようなそれを見て、周りの人たちにそれを伝えた度に私は幸せに包まれる。いつしかその行為がとても意味あることに気がついた私は全ての宝物を開けることにした。
さぁ、次の物語はどうなのだろう…?

※※※

今、俺の目の前には一つの掲示板があった。
それは俺が働いている会社の連絡兼依頼用のものとしてビルの入口に置いてある物なのだがそこ一面使って人の名前が書きなぐられている。

霧野棺凪、これは俺の名前。

織谷嗚呼、これは俺の会社の社長みたいな人。ここぞという時じゃないと働かない変人でもある。

相沢幸帆、彼女は俺の上司的存在。ある趣味さえなければ完璧な人だ。

上条奏、俺とほぼ同時期に入社した女の子。ちょっとドジだが可愛いし、何故か凄い特技を持っている。

全員、俺の勤める会社の人たちだった。これってあれだよな、プライバシーの侵害って奴、なんて無駄なことを考えてみたがすぐにやめてしまった。こんなことはこの会社に入ってから日常茶飯事でありもう驚くべきことではないのだ。
というより、周りの人の方が非日常っていうのもある。彼女たちに比べればヤのつく職業な方々の恐喝文なんて可愛いものである。
俺は一つ溜息をつくといつも通りに灰色のビルの中へ吸い込まれていった。

※※※

「退屈で死にそうなんだけど」
「目の前にある書類の山を全部片付けてからそのセリフを言ってください」
俺が働いているのは通称"廃色ビル"の四階、これまた中途半端な階にある織谷よろず請負屋という不自然極まりない会社だ。一応仕事内容はその名の通り、なんでも請負いなんでもするよろず屋みたいなものである。もちろんなんでもしてしまうので法に触れるか触れないかなこともあるし、どっぷりと裏の世界に顔をつけなければいけないこともある。先程の恐喝文も以前の仕事で関わった組織によるものだろう。
正直、後ろ盾なんてなさそうなこの会社はすぐに潰れるのではないかと入社当時は思っていたが、俺が勤め始めて早二年、依頼は千差万別だがどんなことをしてもこの会社が潰れる気配はなかった。俺の推測でしかないが、多分今目の前でグダグダしている社長の織谷嗚呼が常人ではないのだろう。普段は昼行灯もしくはそれ以下の存在だが、いざというときには彼女ほど頼りになる人はいない。
「棺凪くん棺凪くん、腹痛でお腹が捩じれそうだから休んでもいい?」
「捩じれてもいいから仕事してください」
「幸帆、棺凪くんがいぢめる」
「お腹が捩じれても一回転すれば元に戻ると思うので大丈夫ですから、仕事してください」
「ちょ、戻んないって!?君らは配慮ってものを知らないのかい?いいもん奏ちゃんに訴えてやる!」
…頼りになることもあるんだが、この人は…。
俺と幸帆さんが同時に溜息をついた時、隣の給湯室から一人の少女、上条奏が顔を出した。小麦色の髪を揺らしつつ、フラフラと危なげな足取で人数分のお茶を持って来ている。俺は慌てて彼女の元へ走りより、お茶を配るのを手伝った。
「え、とお茶入りました。皆さんお茶菓子も出しますのでちょっと休憩ませんか?」
「神だ、神がここにいる」
「あ、でも社長はちゃんと切りのいい所まで、せめて目だけでも通して下さいね」
「鬼だ、鬼がここにいる」
まったく、目の前にいる人に対して堂々とこの社長は。
社長は無視することにして、一口一口飲むごとに身体が暖まるのを感じながら俺は上条奏が煎れたお茶を楽しんだ。幸帆さんもいったん手を休め、美味しそうにお茶菓子を摘んでいる。基本的に表情が変わらない彼女の顔だがこの時だけは明確に感情が分かる。これは結構貴重な瞬間だ、あることに関するのを例外にした話でなんだが。
お茶を飲みつつ、ちらりと机に散らばる書類へ視線を向ける。そこには今回頼まれた依頼に関する様々な情報が入り乱れていた。中にはあまり食事時には適さない写真や報告も載っていたが、俺は構わずに読み続けた。
今回の依頼は巷で騒がれている連続殺人事件の犯人を見つけること。本来なら警察の仕事のはずなのだが、依頼者は事件の被害者の家族と警察関係者なんて組み合わせなので文句が言えない。この会社は社長の気分と社長のモットーにさえ反しなければ大抵の依頼は受理されてしまう。今回のもまたその例外ではない。
そこまで考えると、俺は会社の不条理さから犯人の殺害方法について思考回路を転換させた。既に依頼者の家族を合わせて五人が彼ないし彼女によって命を奪われている。犯人の殺害方法は特殊だ。
主に夜中、老若男女、親子供兄弟、無差別にハンマーかその類で後頭部を殴打。大抵はこの一撃で死ぬか気絶してしまうらしいがそれだけでは犯人は終わらない。
彼ないし彼女、面倒くさいから彼としよう、彼は気絶した被害者を道のど真ん中で解剖し始めるのだ。それは医学的な解剖方法ではないらしいが、まず皮膚を丁寧に観音開きのように剥ぐ。そして筋肉を裂き、内蔵を抉り、骨を取り出し、まるで宝物探しのように背中の皮膚に届くまで被害者をバラバラにし尽くすのが、彼の犯行の特徴だった。
これだけの犯行を五回もしておいて、捕まらないのは異常だった。俺たちは確かに犯人確保を依頼されたが、名探偵のようにサッサと事件解決できるわけではない、まして警察ほどの調査力があるわけがない。日本の、というか五大貴族の一つ、"力"の刀切一族によって統轄されている警察はナメてるとかなり痛い目にあう。ナメていなくとも余程の犯罪者でない限り、彼らに捕まらない保証はなかった。
それを一般人よりもよく分かる俺は、だからこそ俺たちでは解決できないような依頼を何故社長は受理したのかが分からない。
まぁ、彼女の思考回路を理解できる人間はそういるもんでもないんだが。


→弐へ続く…かも

冬の寒さに感情も凍え

アダプターがアバターに見えましたカンナです。末期もいいとこだね!

またそろそろ試験という地獄の季節となりました今回ヤバかったら真面目にやばいです。ゲーム没収の可能性大………
頑張る、頑張んなきゃ……


でもやっぱり漫画を読んでしまいまして、ブックオフで。あえてジャンルは言いませんが、いや樹には言っちゃって後悔しましたが、とにかく読んでたんですよ。それでまあふつうに楽しんで家に帰って次の日.hackしてそうだ今日ウルトラジャンプ発売じゃん兄が買ってるはずだから部屋漁ろうといないの見計らって入ってみたところ……


昨日私が読んだ漫画が兄の机のど真ん中に。

ちょ、おま


あまり読んではいけないジャンルです。
私は買おうとは思っていませんでした。
値段を見ると昨日私が読んだのとまったくおなじ。


ちょ、おま


兄がよくわからなくなってきた今日この頃。
まぁいいか

……??

2007年11月9日金曜日

ネタないって言ったけど実はあったことを思い出した

だってねぇ?逮捕しちゃうぞOP買っちゃったりしちゃったりしたのに。
なのになぜか買ったばっかりの曲よりクラナドのOPが頭の中をエンドレスリピート。やばいなぁ・・・

というわけでバトンバトン

オタクバトン
■あなたが今まで夢中になった作品(漫画、アニメ、ゲームなど)を教えてください!
・幼稚園
→男子と一緒にドラゴンボールみてたの覚えてます。後戦隊モノとか・・・・・・い、いや普通にセーラームーンもはまってましたよ!?(汗

・小学生低学年
→・・・小4あたりでサクラ大戦を(親の前で)みてる記憶、が、・・・

・小学生高学年
→ベイブレード。カイ様カイ様!!んん、それ以外あんまり記憶にないなぁ・・・ゾイドとか?

・中学生
→ネギま(私のオタク化の元凶)、R.O.D、サモンナイト、うたわれるもの、舞-HiMEシリーズ、FFⅦ、etc...なんだこれは、小学生から一気にレベルアップだよ。

・高校生
→.hack//G.U.、うたわれるもの、はやて×ブレード、逮捕しちゃうぞ、etc...

・その後→何にハマるんだろう・・怖い

■これまでで一番のめりこんだのは?
んん?大きいのはネギま、舞HiME、うたわれるもの、.hack//G.U.。選べない、選べないよ

■現在ハマってる作品は?
.hack//G.U.と逮捕ですかね。

■これから見たい(読みたい・プレイ)したい作品は?
クラナド、レンタルマギカ、スカイガールズ、FFⅩ、キンハ2とか

■オタクな3人に回してください!
YU-RO、ミヤタ、そら氏いかがでしょう・・・?

2007年11月7日水曜日

ドハくりあぁあって怖いよオォーヴァアァアーンン!!

だいいたいこんな感じなんですよ。
というわけでどはvol2クリアーです、最後のムービーが怖くて夢にでるかと思いました真面目に。出てこなかったのでよかった・・・。

いや、ただこれが伝えたかったんです・・・日記のネタがなくて・・・

2007年11月3日土曜日

だんごだんごだんご大家族

はれーわーたるーあおぞーらー
の下には

しぃあわーせはーいーつだぁーてうしぃいなあてはじーめてー
と脳内再生してる末期な女子高生。ちなみにグレンラガンの歌です。

というわけで今日は駅伝でしたー。天気も良くて風もひどくなくこりゃ絶好の駅伝日和だねこのやろう!最初は実はあまり乗り気でなかたんですけどこの天気をみたらやっぱ走りたいなぁと思いましたよ。河川敷なんで見渡しもいいので近くに住みたい感じ。
このままぼのぼのしてればいいんですけどそれじゃ何しに来たんだというものでして。

走りました。

私ぶっちゃけちけんです。あ、チキンです。試合の度にがくぶるです。やってらんないですけど、もう治療法を教えてくれと。中学時代からそうなんですよね。

で、

今日は少しそれが治ったかなぁと。
いややっぱがくぶるしますたけど。トラックで走らないからか、試合めいた雰囲気があまりに範囲が広すぎて拡散したからかでしょういか。まだまだちゃんとは走れませんでしたが、でも前よりかは良かった気がします、次もなるといいと思う。思うんじゃなくやれと。
嬉しかったのはやっぱり声援と知らない人からの応援でした。ありがとうです!

で、

話題変わりますがクラナドにはまってしまいますたかも。てかkey作品てよさげなんですもん。アニメもすっごく流暢で光の調節加減とか話しの流れとか。とにかく綺麗。ついでにいうと好みのキャラがヒロインにたくさんいるというのもあるけれど。のりっつ込みもよかった。樹はクラナド持ってるだろうか・・・。
でもとりあえず今の私は揺光を助けることに精一杯です。ぶっちゃけ揺光の名前連呼したら緊張がすこし和らいじゃったのはやっぱ秘密で。

鬼灯草紙 巻ノ弐

※※※

神主の叫びを最後に、私の記憶は虚ろなものになった。気がついたら自宅にいて、神主か誰かに殴られたらしい痣と痛みだけが私に何かを悟らせていた。
そしてその日を境に、依縁の姿を見る事はなくなった。結局祭の儀式は取り止めになり、警察に捜索願を出した依縁の父はその結果を知ることなく翌日に自殺した。遺書はなく理由は分からないが、多分過疎化しつつある土地唯一の観光行事としての鬼灯祭は決して失敗してはいけないもので、その重圧が彼を蝕んでいたのだろうというのが周りの勝手な見解だ。依縁も警察の捜索も空しく何の手掛かりを残さないまま消えて、皆は次第に神社を記憶の底に埋め、私だけがその事件に取り残された。
そんな土地から一刻も早く離れるため、それからの私は勉強に没頭し、親の制止を振り切って都会の高校へと逃げていった。10年がたち、職にも就いて生活がようやく安定した頃、私はあの村が既に廃村となっていたことを知った。

※※※

砂利が立てる音は昔と変わらず、久しぶりに履いた運動靴に心地良い感触を感じさせていた。
夏の陽射は相変わらずで、私は木陰へ避難すると小さく溜息をついた。10年間という年月は私とこの村にとって充分なものだった。高校入学を最後に連絡とっていなかった両親は既に私を勘当したと認識しているため、どこにいるか分からないし死んだかどうかさえも知らない。何とも親不孝な子供だと自分でも思うが、別に後悔はしていなかった。
今まではあの頃の虚ろな記憶が恐怖だけを頭に植え付けて私の帰郷を思い止まらせていたが、そろそろ覚悟を決めて過去を知るべきだ。それに依縁を怖いままで放っておくわけにはいかない。彼女は今、普通の生活を送っているのだろうか。まだあの神社の中で彷徨っているのか、それとももうすでにこの世界から…。
私は思考を中断し、かつて神社だった場所へと歩きだした。結論はまだ出せないし、出したくない。この村に宿泊施設などあるわけがなく、この土地に居られるのは時間が限られている。出したくなくても出さなければいけないし、そのためにここまで来たのだ。
私は息を整え、長年整備されずにいたため荒れ果てた道を歩き出した。
記憶を辿りながら歩くなか、この村が地図から消えたという現実について考えた。元々あの頃から廃村となることには必然を感じていたが、実際その未来に直面すると意外にも驚きの感情がありそのことに私は驚いた。親の死は必然ながらも実際に死んでしまうと驚く、というものに似ているこの感情は私に村へ愛着があることにも気付かせる。そういえば、昔はこの村と共に死ぬことを考えていた。それなのに今ではここを恐れ、無様に生き残り、そして資格もないだろうに再び土を踏んだ私はこの村という存在にとって何なのだろう。
物思いに更け続けた私は、ふと見上げると目の前には所々朱が剥がれ落ちた鳥居が聳えたっていることに気がついた。常に掃除されていた階段は雑草が生い茂り、鳥居の側にあった石灯籠は雨風のせいか崩れてしまっている。神社裏の竹林は手入れされなかったからか神社を囲むように伸び、その空間を他の全てから遮断していた。
見ただけで、身体が固まった。息は荒くなり、足は震えて動こうとしない。そんなにも私は恐れているのか。何にとは言わない、多分全てのことになのだろうから。不安は体中を巡りあの時のように身体を支配する。
けれど私は一歩踏み出した。震えながら小さく一歩、私がいることを知らせるように一歩、決意を固めるために大きく一歩。私は結末を知りために此処に来た、たとえ無意味な行為でも自分の身に危険が降りかかるような愚かな行為でも責任に近いものが私を動かしている。それは恐怖などでは止められない物だった。

境内は外と同じように草木が好き勝手に方向に伸び、社や依縁の家に絡まっていた。パッと見るだけでは分かりにくかったが、建物はまだ形はしっかりと残っていたので私は容易に神社裏への道を見つけることができた。邪魔な葉や蔦を足で踏み倒しつつ暗闇に覆われた神社裏へと踏み込んでゆく。まだ昼間だというのにそこは暗く、わずかな木漏れ日はほとんど地面に届かず空中にとどまっていた。念のために持ってきていた小型の懐中電灯を取り出して石畳の道を照らす。
懐中電灯の丸い光を見て、あの時の満月を思い浮かべる。今のように暗い闇の中、満月と行灯の灯に導かれ、私と依縁は鬼灯まで辿り着いた。虫の音しかない静かな世界に足音だけが響いていた。

そして今、この私も。

夏の終わりを告げるあの鬼灯が、あの時と違い小さな祠を越えて神社裏の開けた場所全てを覆い尽くしていた。この空間のみ竹は無く、鬼灯の朱だけが私を飲み込んでいる。自然繁殖でこうもなるのか?竹に絡まり天高い所まで及んでいてまるで朱のドームに入った私にあの頃と同じ怖気が沸いてきた。
(そうだ、依縁…)
居るかどうか分からないけれど、とりあえず辺りを見渡す。周りを支配するのは朱赤紅緋橙………
神社裏の道はこの鬼灯の間で終わっている。祠の先がないか腫物を触るように鬼灯を退かして確かめようとするが鬼灯の向こう側には鬼灯しかない。
「依縁ー!!依縁ぃー!!?」
声の限りに叫ぶ。木霊した私の声は空しく空へ溶け込んでいき、それに対する返事は返ってこなかった。責任が少しずつ恐怖に呑まれてゆく。まだ、まだ終わってはいけないのにこの異常な空間のなかでトラウマの恐怖と現在の恐怖があいまじる。まだ何も判ってはいないというのに、依縁も見つけてはいないというのに。
…いや、依縁は多分見つからないだろう。恐怖によるものもあるけれど、なにか直感めいたものが私の中にはあった。多分もう彼女はおろかこの村に住んでいた人たち全員に会うことはない。
それを感じた時、私は惚けながら思わず呟いた。
「なんだ、これでは私が神隠しされたようではないか」
それに対しての答えは聞こえることなく、ただ風に揺られた鬼灯がさわさわとざわめいただけだった。


※※※


倉稲詩乃はその後小さく黙祷を誰かに向けて捧げ、引き返していった。
残ったものはただざわめいた鬼灯と揺らめいた笹の葉と古びた祠と、その背後に隠れたように蹲った白骨だった。
するとどこからともなく白い狐が現れた。目尻には勾玉のような模様があり目は限り無く細い。
詩乃が佇んでいた場所に視線を向け、詩乃が去った方向に顔を向けるとくすり、と微笑んだ。