2009年7月2日木曜日

tete-a-tete Side[S]

ずっと側にいる"私"の当たり前

それを私は"当たり前"とは思えなかった

当たり前のことが"当たり前"じゃなくて

だから"当たり前"が当たり前の世界に憧れた

でも

そこには当たり前に"私"の当たり前はなかったけど

※※※

tete-a-tete Side[S]

※※※

一歩上るごとに、ハイヒールがコンクリートを打ち鳴らす音がビル中に響き渡った。使われなくなって適度に荒廃したコンクリはよく反響している。無人だからか、尚更音がよく聞こえた。
人気の無い場所にいる香坂美咲を探すのは毎回のことで慣れたものだった。神宮寺雪那は軽い足取りで屋上へ繋がる踊り場まで辿り着いた。
目の前の扉を開けば、自分の片割れである香坂美咲が一人で恐らく寝転んでいる。
ずきり、と取れない小さな刺が心に深く食い込んだ。こういった誰もいない場所で美咲を迎えに行くことは慣れても、その度に攻め立てる罪悪感だけは決して慣れることはなかった。
(判ってるわよ、私たちがこの世界に来たのは私がきっかけなことぐらい)
だからこの世界が少しでも美咲に過ごしやすい場所になるよう、側にいたい。
(でも、それは自分のためでもあるんだからプラマイゼロどころかマイナスよね)
結局は、二人とも互いを頼るしかないのだ。
自分の考えに一応の決着をつけると雪那は扉に手をかけた。錆び付いた扉は意外に重く両手でようやく開けると、案の定すぐ近くに茶色のロングコートを敷いて寝転ぶ美咲の姿が目に入る。
黒髪を風になびかせ、両手を頭の後ろに回し、空を見上げる雪那の片割れ。
「捜したわよ、美咲」
声をかけると、美咲はわずかに動いて雪那と目を合わせた。眠たそうではないところから、ただ寝転んでいただけなのだと判る。
綺麗だなぁと、場違いのような感想を雪那は持った。自分とは正反対の彼女に雪那は強い憧れを持っていた。
自分とは違って、美咲はどこまでも純真な存在だ。その手が血で染まっているとかいないとかは関係無い、ただ一つのことに心を預けて迷っても戸惑うことはなく、ひたすらに先へ向かう姿は綺麗だとしか言い様が無かった。まるで完璧に磨きこまれた水晶を覗いているようだとも言える。
そして何よりその心を預かるものが自分であることが嬉しくて、誇らしい。こんな半端な自分を必要としてくれる美咲を、雪那は必要だった。自分を必要とする美咲がいる限り、雪那には生きる価値がある。
そんなこと、今更ながらで恥ずかしくて本人には言えないけれど。
「また辺鄙な場所にいて…こんなところに来るのは美咲ぐらいなものよ?」
「見つけやすくていいじゃないか…」
「でも来るのに疲れるわよ。ここって廃棄ビルでしょ?見つかったら面倒くさいし、そろそろ帰らないと私が困るし美咲も困る」
うー、とまるで拗ねた子供のような唸り声を上げた美咲だが、すぐに諦めたのか身体をおこして下に敷いていた茶色のロングコートを軽くはたいてから羽織った。
「仕事、ねぇ…」
「ほらほら、とりあえず仕事をやり終えられるぐらいの気合いを出しなさいな」
「…雪那、今日は普通に帰るだろ?送らなくて平気?」
まだ行くのに渋っているのか、ちらちら雪那の様子を窺っている。あぁ可愛いけどそれとこれは別のこと。雪那は思わず呆れて溜め息をついた。
「私を送ってそのままサボろうとするなら叱るよ、もう。今日は美咲の部屋に寄ってご飯作ってから帰るよ。たまには栄養のあるもん食べなさい…目を離すと美咲はすぐに不健康生活に突入するんだもの」
質が悪いのはそれでもしばらくは健康体で暮らせる美咲の丈夫さよね、と追い討ちもかけると美咲はまたもや黙り込み、ようやく仕方が無いとでも言うように空を見上げた。
この雰囲気は気乗りしないというよりめんどくさいに近いだろうか。代われるのなら代わってもいいけれど、やるべきことはひとそれぞれだ。それはたとえ双子だろうと例外には入らない。むしろどこまでも近くて遠いから、二人は自分のすべきことでもう一人を補わなければいけなかった。
美咲が後ろの過去を振り払うなら、雪那は前の障害を取り除く。二人で一人ではないけれど、二人がいなければ二人は二人でなくなってしまう。
この関係はどんな言葉にも当てはまりそうで当てはまらない。ただ分かるとしたら、今の世界にとっては歪なものであることぐらいだ。それでも、自分たちはこうした関係の下で生まれてきた。それ以上もそれ以下もない、自分の身体は自分のものであるというぐらい、美咲の存在が近くにいることが雪那にとっての常識だった。

だからこそ、一度他の世界を知った自分は、元の世界にはいられなかった。
知るという認識は何よりも残酷だ。
知った以上、逃げなければ私自身だけでなく美咲さえも壊していた。
私は壊れても構わない。けれど、美咲が壊れるのだけは耐えられなかった。

逃げなければ、ならなかった。

※※※

あと少しもすれば黄昏時を向かえるだろう。そこは雪那たちがいた世界との境界線だ。
二人は一緒にビルの一階まで下りると、軽い挨拶を交わしてから別行動を取った。美咲は繁華街へ鬼退治、雪那は夕飯の買い物に…と昔話のように。
今日の夕飯は何にしようか。美咲にはああ言ったものの、どうせ美咲は食べないだろうし自分は美咲の部屋で一泊するつもりだった。
この世界で警戒心が強すぎる美咲はまるで自分の縫いぐるみがなければ不安になる子供のように、自分のよく知る存在である雪那がいないと完全には眠れない酷い体質を持っていた。美咲を寝かせてやりたい意味もあって、今夜は部屋に泊まらせてもらうつもりだった。
(見ているだけの側としては痛々しくて、変えられない自分が悔しい…時間が今の一番の解決法だなんて)
神宮寺雪那ともあろう自分がなんというていたらくだ。
「あー、雪那じゃないか」
自虐思考に入りかけたところを目の前で手を振る人物が引き止めてくれた。顔を上げてみると、そこには同じ大学に通う、よく跳ねた髪が特徴の武仁湊がいた。
彼もまた、雪那にとって特殊な存在だ。美咲とは計る天秤が違うけれど確かな好意を持っていて、大切で、でも互いに相手に越えさせない一線を心に引く不思議な関係。
「こんにちは、湊くん」
「あまり名前で呼ばないでくれって、言わなかったけ?」
「好意ある意地悪よ、武仁くん」
にっこりと笑ってはぐらかすと、湊はこれ以上追及するのを諦めたのか頭を無造作にかきながら話題をかえた。
「何かの帰りか?もし暇だったなら一杯おごるけど」
「残念、おじいさんが芝刈に行っている間におばあさんは夕飯の支度をしなければならないのです」
「相変わらずだな…とやかく言うつもりはないけどさ。俺もこのあと用があるし」
「それに金欠だし?」
「女に金の心配されるほど男として落ちぶれたつもりはないです。…俺ってそこまで駄目人間に見えるか」
「駄目人間というよりも逃げ人間にみえる」
呆れたように聞いてきた湊に雪那は正直な答えを返した。
武仁湊は本当に特殊な人間だ。彼は素姓が分からなくて名前で呼ばれるのが嫌いで、何事も逃げることを第一にして生きている。逃げて逃げて逃げて、逃げ続けるその生き方が死ぬ最後まで続くのは容易に想像できた。
それだけだとタダの駄目人間にしか見えないけれど、できるだけ長く逃げ続けることに重点をおいているので、本当の本当にやらなければいけない時には動くことができる彼が雪那は好きだった。
「三十六計逃げるに如かず…昔から言われていることを実践してるだけだ」
「まぁそんな武仁くんが好きナンデス」
「大切じゃないけど、てか」
「その通り」
彼には悪いが、雪那にとって一番大切で優先すべきことは美咲なのだ。神宮寺雪那は武仁湊が好きでも、彼のことは美咲よりも大切ではない、つまり優先順位はその他大勢と大差がない。
「立つ瀬ねぇな…逃げるとするか」
あくびを一つしてもう一度頭を無造作にかくと、武仁湊はまた明日と言いながら人込みに紛れてしまった。
(……正直に言い過ぎるのも良くなかったかな)
雪那が嘘をつく相手は、信用も信頼もない他人だけだ。と言っても、それに当てはまらない相手は先程の武仁湊か美咲ぐらいなものなので、ほとんどの人間を雪那は他人として距離を隔てていた。そのうえ武仁湊に出会ったのもつい最近なので、許せる相手は一人きりだったのだ、力加減が分からないのも仕方がない。
「…買い物へ行きますか」
自分に一つ言い訳を作った後、雪那も先程の湊と同じく人込みの中へと紛れていった。

過去を退けて疲れるだろう半身を迎えるために。

※※※

落ちがないままtete-a-tate終了ーわー

orz

まぁこの話で二人が救われるわけじゃないんですけど
とある日常みたいな
ただ書きたかっただけという
ただ書いてみると雪那の性格が想像以上に悪くなっているような…
美咲より社交性はあるけど、自分本位で美咲以外は路傍の石認識だし。
そんな彼女を変えてくれるのが湊だといいな(願望
湊でてきたからそれも書こうかな…=〇)Д`)ごふぅ

美咲のイメージは水晶で雪那は紫水晶
知るということは認識=存在肯定なんだと思います。幽霊なんていないさと言っても幽霊という言葉を知った時点で、たとえ否定したとしても幽霊がいるという仮定を始めに造るわけですから存在を肯定しているという屁理屈
ウェイバもそうですが、私がつくっている世界観の根底にはこれがあるのだと思ったりなかったり
ようはその言葉を知った時点で私たちは負けたのだ

何に?←

しかしまぁこれの本編見たいな感じに考えているのって、ぶっちゃけゲームに向いていないんですYO
主人公の湊が大学生彼女持ちとか
ヒロインの美咲と雪那に主人公格が喰われまくってたりとか
キャラの平均年齢二十歳以上ぽいし
なんかF〇teみたいだしorz
タロットとその持ち主を全員出すと44人以上出すことになるし
何より戦闘シーンがわっさわさ
最後のは自分の力不足ですねはい
でも一つでも良いから脳内小説を現実なものにしたいですね。え、ウェイバー?すみませんorz
脳内長編てことで


リディアに黙祷…!!!!

ごめんなさいオクタヴィアにドッキュンです
ただ最近、兄姉にTTT視聴を妨害されている…orz

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