2008年3月10日月曜日

山百合迷路? 後

「うぎゃっ!?」
「おぉ、相変わらずの叫び声」
「聖が言ってたのってこれね」
「確かに恐竜の子供みたい、面白い」
「祐巳さんもうちょっと叫び方変えた方が…」
順に白薔薇さま、紅薔薇さま、黄薔薇さまそして由乃さんのコメントでした。あの、どれにも私を心配する発言がないんですけど。
それとこんなことやる人は白薔薇さまだけだと思ってたのに、その人は今祐巳の目の前に座っている。ということは、他の誰かが覆いかぶさっているわけで。祐巳の視界には志摩子さんを膝にのせた白薔薇さま、ちょっと驚いてる紅薔薇さま、面白いことが溢れてて水を得た魚のような黄薔薇さま、そういえばさっきから居たにも関わらず発言してなかったため影が薄い令さま、とその妹由乃さんがいる。山百合会のメンバーであと足りない人は…もし、かして…
「祐巳の反応、可愛いわ」
「お、お、お」
口の中で言葉が空回りして上手く出てこない。
「…?どうしたの、祐巳」
「お姉さま!?」
ようやく言えた、その一言。抱き付き犯はなんとお姉さまの祥子さまだった。いやどうしたのって、そっくりそのままあなたに返したいんですが。
「白薔薇さまの言うとおりね、抱き心地がとていいわ」
「えー、今は志摩子のほうが抱き心地はいいよー」
「何言ってるんですか祐巳に決まっています」
なんか妹自慢を展開されてるところ悪いんですが、本当にお姉さまはどうしちゃいましたか?
「これは…アレね」
「そうね…アレかもしれないわ」
何か意味深な言葉を交わしあっている紅薔薇さまと黄薔薇さま。その顔つきはとても深刻そうで、まるで覚悟を決める前の武士のようなだ。
二人の異変に気がついたのか、由乃さんたちや志摩子さんもそちらに注目している。白薔薇さまとお姉さまは互いの妹を抱きながら、まだ妹バカ喧嘩をしていた。
「祐巳ちゃん、由乃ちゃん、志摩子…これはあくまで推測よ…」
あ、黄薔薇さま誰か一人足りません。その人すっごく落ち込んでます。
だけど黄薔薇さま、華麗に令さまをスルー。
「これは多分…夢ね」
「「「はい??」」」
三人同時に聞き返した。
「よくあるじゃない、夢で知っている人が壊れちゃったり、ありえないことがおきたりするのが。全て夢だと言えば納得がいくわ」
「いや確かに夢だと言えば全て丸く納まりますし、夢オチは収拾がつかなくなったときの最終手段ですが…」
「ほら、そんな説明口調になっているのが何よりの証拠よ。どことなく志摩子に毒みたいのがあるのも、いつもはイケイケな由乃ちゃんが大人しかったりするのも説明がつくでしょ」
そう言われると、確かにそうだ。夢とは予想外だけど…そうすると一つの疑問が浮かんでくる。はたして、いったいだれそれの夢なのかこれは。
「でもそうなると、いったい誰の夢なのでしょう?」
夢の志摩子さんが祐巳と同じ疑問を浮かべる。由乃さんもそりゃそうだと同意した。
夢は夢でも、皆それぞれ意思を持っているらしい。すると祐巳だって誰かの夢なのかもしれない。
その質問に紅薔薇さまは眉間に指を置いて考える。しかし突然そうだと大声をあげて、ポンと拳でもう片方の手の平を軽く叩いた。さすがは紅薔薇さま、もうどうすればお姉さまがこんな奇人変人な行動をしないで済むか解ったようだ。
「祐巳ちゃんっ、何か鈍器ない?」
って何か危ない予感がたっくさんだ!?
そんな満面の笑顔で尋ねられましても困りますっ。
「紅薔薇さま落ち着いてください…!!」
「うふふ、私はいつも落ち着いているわよ?」
ああ怖い、怖いですよ紅薔薇さま。そういう台詞を言っちゃうと落ち着いてないのを裏付けるようなものですって。
「だってほら、定番じゃない。誰かに殴られて夢が覚めるっていうの。誰の夢か分からなかったら全員殴ればいい話よ」
「いやいやいや、それ夢前提ですよね夢じゃなかったらどうするんですか立派な犯罪ですよ死んじゃいますよ」
「大っ丈っ夫、多分!!」
そんな全力で多分なんかつけないで下さい黄薔薇さまー!!!
しかも近くの花瓶を持ち出そうとしないでください志摩子さーん!!?
そしてそれを笑顔で受け取らないで紅薔薇さまー…っ!!
「さて、誰から逝きますか?」
志摩子さん、志摩子さん、物騒な文字に変換されてます。
「とりあえず、主人公から」
「目茶苦茶理不尽です」
「じゃあ一番人気の聖で」
「お姉さまのネジをこれ以上緩めてどうするんですか」
「もう、めんどくさいわね誰でもいいし…やっぱり祐巳ちゃん、よろしくお願い」
いや待って下さいそんなフルスイングしないで痛い通り越しますって…………!!
「目覚めろっ、解き、放ーつ!!」
「なんかいろいろ混じってますー!?」

※※※

「なんかいろいろ混じってますー!?」
大声をあげながら、祐巳は布団から飛び起きた。荒い呼吸を繰り返しながら、自分が今どこにいるかを確認すると、どうやら自分の部屋らしい。
(ということは、やはり私の夢だったのか…)
ほっとしたような、しないような…。でも、とにかく夢でよかった。
「祐巳ー、入るぞー」
ノックもままならず入ってきたのは弟の祐麒の声。こら姉の部屋とはいえそんな軽々しく入ってこないでと言おうとして、固まった。
「ほら早くしないと遅刻するぞ」
すらりとした長身に艶やかな黒髪、そしてその存在から放たれる輝かしいオーラ。見間違うことはない、なんと祥子お姉さまではありませんか。

………え?

突然浮かび上がった仮説を全力で否定する。ありえないありえない、ほらお姉さまの後ろに祐麒がいるに違いない。

いなかった。

代わりにお姉さまから放たれる祐麒の声。
「何ぼーっとしてんだよ?」
脳みそがパンクします。どれが夢で現実なのでしょう。まるで迷路のように入り組んでいる。


とりあえず助けて下さいお姉さまーー…!!!


※※※
結局サイトよりもこっちが先に完成しちゃいました。ギャグのオチほど難しいものはない。無理矢理なオチですみません。あと祐麒じゃなかったらすみません、文字違うかも。
なんというかファイトだ!?

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